網走は日本で唯一の「釣りキンキ」の産地。まちの特産品の高級魚として、東京などに出荷される。しかし、資源量は世界的に減少傾向にある一方で、主に水深数百メートルから1500メートルの深海に生息するキンキの成長過程など詳しい生態は分かっていない。
松原講師らは今春から増殖に向けた本格的な研究に着手。網走漁協延縄部会の中村漁業と水谷水産工業から生きたままの親魚の提供を受け、人工授精などに取り組んでいる。
これまで、動きが活発で良質な精子の判別法を突き止めた。4月22、24日に質の高いメスの卵を選び、人工授精させたところ、数千匹の稚魚がふ化した。現在も研究用ビーカーの中を元気に泳ぎ、体長約3ミリまでに成長している。
詳しい生態が明らかになっていないため、キンキの稚魚は何を好んで食べるのかを探らなければならない。今後は稚魚を放流できる体長約5センチまでに安定的に成育できることが課題で、稚魚が食べるエサの解明を含め、松原講師は「稚魚の飼育条件を検討していきたい」と話している。
松原講師らは精子の長期保存に欠かせない「精漿(せいしょう)」を、人工で作る研究にも取り組んでいる。成功すれば、運動が活発な精子を長期間にわたり冷蔵保存することが可能になる。
道立網走水産試験場の調査研究部長は「深海性の魚の研究は大変難しい。稚魚のエサの解明などにつながれば」と話している。室蘭市にある道立栽培水産試験場でもキチジの研究に取り組んでおり、人工授精まで成功しているが、ふ化までは至ってない。(大)
写真上…ふ化した稚魚
写真左…高級魚の釣りキンキ