気候変動による温暖化は農業・林業・水産業への影響も懸念されている。農林水産省農林水産技術会議が報告した研究開発レポートでは、数パターンの温暖化の進ちょくを前提に研究された報告書をまとめている。温暖化の予測は自然の"ゆらぎ"という年ごとの変化と温暖化による影響を区別するのが難しく、一定の前提条件による不確実性を含んだ、予測モデルと位置づけている。
レポートの冒頭「今後、過去100年間で経験した上昇幅よりもかなり大きな気温上昇を経験することになり、1次産業に深刻な影響を及ぼす」としている。
レポートは2060年代に現在よりも全国平均で約3度気温が上昇するシナリオでの影響予測を示した。低緯度地域では穀物生産性が低下、中高緯度地域では穀物生産性が向上する。つまり日本よりアジア、アフリカの低緯度地域の途上国から始まるという見方が示されている。しかし、気温上昇が2〜3度を超えると、高緯度地域でも穀物生産性は低下すると予測されている。
国内予測については (1)水稲収穫は北海道では増加し、東北以南では減少する (2)リンゴの栽培適地は徐々に北上し、北海道はほぼ全域が適地になる一方、関東以南はほぼ範囲外となる (3)肉用鶏の産肉量は西日本で大きく低下し、15%以上低下する地域も出る−としている。
北海道の水稲栽培は2060年代には13%増加するが、東北以南で8〜15%減少するとされている。だが、この予測では高温不稔や病害虫の影響を考慮しておらず、数値はあくまで目安としている。また、CO2上昇が光合成を促進させる研究も報告され、小麦、大豆、バレイショの増収効果も紹介されている。
同省は2007年に高温障害による農業生産への影響について全国調査した。その結果、水稲の高温障害、果実(ブドウなど)の着色不良、病害虫の多発などがあり、すでに農業への影響が出ているという。農業における温暖化対策として気候変動に応じた品種改良と栽培技術の開発を挙げ、すでにそうした研究が始まっているとしている。
また、夏の気温上昇に伴い、干ばつの影響が懸念されている。大豆は水不足による収量低下が懸念され、農業用水の確保が新たな課題となっている。このほか水田や牛などの反芻(はんすう)動物から発生するメタンも温室効果ガスを押し上げる要因とされ、排出量の抑制も課題のひとつとしている。酪農・畜産業における緩和策として、脂肪を含むビール粕や生米ぬかを混ぜた配合飼料の研究も進められている。
網走農業改良普及センターによると、管内の課題について寒冷地作物の改良や害虫対策などがあるが、一方で暖冬によってハウス栽培での経費の軽減、定植時期が早まることによる収量アップなどプラス面もあるという。
近年の降ひょうや大雨被害など気象や天候の変化による影響も含めると、「農業を守り、食を守る」難しさはさらに増すだけに、市民の温暖化対策への積極参加は待ったなしとなっている。 (澄)